日々の仕事に追われる中、桐島さんへの思いが募るばかりだった。彼女の自由気ままな性格と笑顔が、どこか救いのない日常を彩ってくれる。しかし、その彼女に相手にされないことが、俺の苛立ちを募らせていた。
昼休み、俺は一人で社内の休憩室に座っていた。思い切って桐島さんをランチに誘ったが、見事に断られたばかりだ。スマホを手に持ち、Vtuberの配信を見ながら、ため息をつく。周囲の同僚たちは楽しそうに談笑しているが、その輪に入る気力もない。
その時、佐藤さんが休憩室に入ってきた。彼はこの会社に長く勤め、数々のプロジェクトを成功に導いてきた頼れる先輩だ。俺が苛立ちを隠せないでいるのを見て、彼は椅子を引いて俺の向かいに座った。
「今宮、何かあったのか?」
佐藤さんの落ち着いた声が、心に響いた。
「いや、別に…ただ、ちょっと…桐島さんにランチ誘ったけど断られました。」
正直に言うと、少しだけ心が軽くなった気がした。
佐藤さんは微笑みながら、少し考えるように眉をひそめた。
「なるほど。桐島さんか。彼女は自由奔放なところがあるからな。でも、それが彼女の魅力でもあるんだろう?」
「そうなんですけど…どうしても彼女に振り向いてもらえなくて、苛立ちが収まらないんです。」
佐藤さんは頷きながら、昔話を始めた。
「実は、俺も若い頃はお前と同じように悩んでいたことがあるんだ。仕事も恋愛も思うようにいかなくて、自分の力不足を痛感する日々だった。でも、それを他人のせいにしていたら、何も変わらないことに気づいたんだ。」
「じゃあ、どうしたらいいんでしょうか?」俺は思わず佐藤さんに聞いた。
「まずは、自分自身と向き合うことだな。桐島さんに振り向いてもらうために、今のお前に何が足りないのかを考えてみるんだ。そして、そのために何ができるかを行動に移すんだ。」
佐藤さんの言葉に、俺はハッとした。確かに、俺はただ彼女にアプローチするだけで、自分自身を見直すことはしていなかった。
「佐藤さん、ありがとうございます。もう少し自分を磨いてみます。」
佐藤さんは満足そうに頷いた。
「そうだ、それでこそ今宮だ。焦らずに、自分のペースで頑張れ。桐島さんも、そんなお前を見て変わるかもしれない。」
その後、俺は自分の仕事にも真剣に取り組み始めた。佐藤さんのアドバイスを胸に、少しずつだが成長している自分を感じることができた。桐島さんとの距離はまだ縮まらないが、いつか彼女に振り向いてもらえる日を夢見て、今日も仕事に励む。そんな日常が、少しずつだが輝きを増しているような気がした。
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